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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)1976号 判決

第一事件原告兼第二事件被告

白蓮院

右代表者代表役員

梶原慈文

第三事件原告兼第四事件被告

常光寺

右代表者代表役員

細井琢道

第五事件原告兼第六事件被告

行法寺

右代表者代表役員

水谷慈浄

第七事件原告兼第八事件被告

常修寺

右代表者代表役員

水谷慈浄

第九事件原告兼第一〇事件被告

善福寺

右代表者代表役員

高橋信興

右五名訴訟代理人弁護士

宮川種一郎

松本保三

松井一彦

中根宏

中川徹也

猪熊重二

桐ヶ谷章

八尋頼雄

福島啓充

宮山雅行

若旅一夫

漆原良夫

小林芳夫

石井次治

第一事件原告、第五事件原告兼第六事件被告、第七事件原告兼第八事件被告、第九事件原告兼第一〇事件被告訴訟代理人弁護士

松村光晃

第一事件原告兼第二事件被告、第三事件原告兼第四事件被告訴訟代理人弁護士

竹内美佐夫

第一事件原告兼第二事件被告訴訟代理人桐ヶ谷章復代理人弁護士

千葉隆一

平田米男

第一事件被告兼第二事件原告

古谷得純

第三事件被告兼第四事件原告

佐野知道

第五事件被告兼第六事件原告

近藤済道

第七事件被告兼第八事件原告

西本暁道

第九事件被告兼第一〇事件原告

原田知道

右五名訴訟代理人弁護士

中安正

片井輝夫

弥吉弥

小見山繁

山本武一

小坂嘉幸

江藤鉄兵

富田政義

川村幸信

山野一郎

沢田三知夫

河合伶

華学昭博

仲田哲

第一事件被告、第三事件被告、第五事件被告兼第六事件原告第七事件被告兼第八事件原告、第九事件被告兼第一〇事件原告訴訟代理人弁護士

伊達健太郎

主文

一  第一事件被告古谷得純は同事件原告白蓮院に対し別紙目録記載一の建物を、第三事件被告佐野知道は同事件原告常光寺に対し別紙目録記載二の建物を、第五事件被告近藤済道は同事件原告行法寺に対し別紙目録記載三の建物を、第七事件被告西本暁道は同事件原告常修寺に対し別紙目録記載四の建物を、第九事件被告原田知道は同事件原告善福寺に対し別紙目録記載五及び六の建物をそれぞれ明け渡せ。

二  第二事件原告古谷得純の同事件被告白蓮院に対する請求を、第四事件原告佐野知道の同事件被告常光寺に対する請求を、第六事件原告近藤済道の同事件被告行法寺に対する請求を、第八事件原告西本暁道の同事件被告常修寺に対する請求を、第一〇事件原告原田知道の同事件被告善福寺に対する請求を、いずれも棄却する。

三  訴訟費用は第一事件被告(第二事件原告)古谷得純、第三事件被告(第四事件原告)佐野知道、第五事件被告(第六事件原告)近藤済道、第七事件被告(第八事件原告)西本暁道、第九事件被告(第一〇事件原告)原田知道の負担とする。

事実

略語例

((1) 第一事件原告兼第二事件被告白蓮院を原告白蓮院と、第一事件被告兼第二事件原告古谷得純を被告古谷と、

(2) 第三事件原告兼第四事件被告常光寺を原告常光寺と、第三事件被告兼第四事件原告佐野知道を被告佐野と、

(3) 第五事件原告兼第六事件被告行法寺を原告行法寺と、第五事件被告兼第六事件原告近藤済道を被告近藤と、

(4) 第七事件原告兼第八事件被告常修寺を原告常修寺と、第七事件被告兼第八事件原告西本暁道を被告西本と、

(5) 第九事件原告兼第一〇事件被告善福寺を原告善福寺と、第九事件被告兼第一〇事件原告原田知道を被告原田と各略する。)

第一 当事者の求める裁判

(第一事件)

一 請求の趣旨

1 被告古谷は、原告白蓮院に対し、別紙目録記載一の建物を明け渡せ。

2 訴訟費用は被告古谷の負担とする。

3 仮執行宣言

二 請求の趣旨に対する答弁

1 原告白蓮院の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告白蓮院の負担とする。

(第二事件)

一 請求の趣旨

1 原告白蓮院と被告古谷との間において、被告古谷が原告白蓮院の代表役員及び責任役員の地位にあることを確認する。

2 訴訟費用は原告白蓮院の負担とする。

二 請求の趣旨に対する答弁

1 被告古谷の請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告古谷の負担とする。

(第三事件)

一 請求の趣旨

1 被告佐野は、原告常光寺に対し、別紙目録記載二の建物を明け渡せ。

2 訴訟費用は被告佐野の負担とする。

3 仮執行宣言

二 請求の趣旨に対する答弁

1 原告常光寺の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告常光寺の負担とする。

(第四事件)

一 請求の趣旨

1 原告常光寺と被告佐野との間において、被告佐野が原告常光寺の代表役員及び責任役員の地位にあることを確認する。

2 訴訟費用は原告常光寺の負担とする。

二 請求の趣旨に対する答弁

1 被告佐野の請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告佐野の負担とする。

(第五事件)

一 請求の趣旨

1 被告近藤は、原告行法寺に対し、別紙目録記載三の建物を明け渡せ。

2 訴訟費用は被告近藤の負担とする。

3 仮執行宣言

二 請求の趣旨に対する答弁

1 原告行法寺の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告行法寺の負担とする。

(第六事件)

一 請求の趣旨

1 原告行法寺と被告近藤との間において、被告近藤が原告行法寺の代表役員及び責任役員の地位にあることを確認する。

2 訴訟費用は原告行法寺の負担とする。

二 請求の趣旨に対する答弁

1 被告近藤の請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告近藤の負担とする。

(第七事件)

一 請求の趣旨

1 被告西本は、原告常修寺に対し、別紙目録記載四の建物を明け渡せ。

2 訴訟費用は被告西本の負担とする。

3 仮執行宣言

二 請求の趣旨に対する答弁

1 原告常修寺の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告常修寺の負担とする。

(第八事件)

一 請求の趣旨

1 原告常修寺と被告西本との間において、被告西本が原告常修寺の代表役員及び責任役員の地位にあることを確認する。

2 訴訟費用は原告常修寺の負担とする。

二 請求の趣旨に対する答弁

1 被告西本の請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告西本の負担とする。

(第九事件)

一 請求の趣旨

1 被告原田は、原告善福寺に対し、別紙目録記載五及び六の建物を明け渡せ。

2 訴訟費用は被告原田の負担とする。

3 仮執行宣言

二 請求の趣旨に対する答弁

1 原告善福寺の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告善福寺の負担とする。

(第一〇事件)

一 請求の趣旨

1 原告善福寺と被告原田との間において、被告原田が原告善福寺の代表役員及び責任役員の地位にあることを確認する。

2 訴訟費用は原告善福寺の負担とする。

二 請求の趣旨に対する答弁

1 被告原田の請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告原田の負担とする。

第二 当事者の主張

(第一、第三、第五、第七及び第九事件=建物明渡請求事件)

一 請求原因

1 原告白蓮院は別紙目録記載一の建物(以下、「本件建物一」という。)を、原告常光寺は同目録記載二の建物(以下、「本件建物二」という。)を、原告行法寺は同目録記載三の建物(以下、「本件建物三」という。)を、原告常修寺は同目録記載四の建物(以下、「本件建物四」という。)を、原告善福寺は同目録記載五及び六の建物(以下、「本件建物五及び六」という。)を、それぞれ所有している。

2 被告佐野は本件建物一を、被告佐野は本件建物二を、被告近藤は本件建物三を、被告西本は本件建物四を、被告原田は本件建物五及び六を、それぞれ占有している。

3 よって、原告白蓮院は被告古谷に対し所有権に基づき本件建物一の、原告常光寺は被告佐野に対し所有権に基づき本件建物二の、原告行法寺は被告近藤に対し所有権に基づき本件建物三の、原告常修寺は被告西本に対し所有権に基づき本件建物四の、原告善福寺は被告原田に対し所有権に基づき本件建物五及び六の明渡しをそれぞれ求める。

二 請求原因に対する認否

請求原因1、2の事実はいずれも認める。

三 抗弁

1 訴外宗教法人日蓮正宗(以下、「日蓮正宗」という。)は、昭和二七年一二月、宗教法人法に基づき設立された、宗祖日蓮立教開宗の本義たる弘安二年の戒壇の本尊を信仰の主体とし、法華経及び宗祖遺文を所依の経典として、宗祖より付法所伝の教義をひろめ、儀式行事を行ない、広宣流布のため信者を教化育成し、寺院及び教会を包括し、その他この宗派の目的を達成するための業務及び事業を行なうことを目的とする包括宗教法人であり、宗教法人法一二条に基づく法人規則である日蓮正宗宗制の外に教団規則である日蓮正宗宗規(以下、「宗規」という。)及び施行細則を有している。

2 原告白蓮院は昭和二九年四月一六日、原告常光寺は昭和四九年一月一二日、原告行法寺は昭和五三年一月六日、原告常修寺は昭和四九年八月一五日、原告善福寺は昭和四七年一〇月五日、それぞれ宗教法人法により設立された宗教法人であるが、原告らはいずれも日蓮正宗宗制(以下、「宗制」という。)に定める宗祖日蓮所顕十界互具の大曼荼羅を本尊として、日蓮正宗の教義をひろめ、儀式行事を行い広宣流布の為め信者を教化育成し、その他、正法興隆、衆生済度の浄業に精進するための業務及び事業を行うことを目的とする、日蓮正宗の被包括宗教法人である。

3(一) 原告白蓮院の規則によれば、同原告の代表役員は同原告の主管にある者をもって充てられることになっており、代表役員の任期は主管在職中とされ、また、主管は日蓮正宗の教師の資格を有する僧侶が就任するものとされている。

(二) 原告常光寺、同行法寺、同常修寺、同善福寺の各規則によれば、各原告の代表役員はいずれもその住職にある者をもって充てられることになっており、代表役員の任期は住職在職中とされ、また、住職は日蓮正宗の教師の資格を有する僧侶が就任するものとされている。

4 被告らは、いずれも日蓮正宗の教師の資格を有する僧侶であるが、被告古谷は昭和五二年四月四日、原告白蓮院の主管、代表役員に就任し、また、被告佐野は昭和五四年七月二八日原告常光寺の、被告近藤は昭和五三年一月六日原告行法寺の、被告西本は昭和四九年八月一五日原告常修寺の、被告原田は、昭和四七年一〇月五日原告善福寺の、それぞれ住職・代表役員に就任し、その地位に基づき代表役員就任の時から本件各建物の占有を始めた。

四 抗弁に対する認否

抗弁1ないし4の事実は認める。

五 再抗弁(擯斥処分)

被告らは、次のとおり、いずれも、日蓮正宗の管長阿部日顕より擯斥処分を受け日蓮正宗の僧籍を喪失し、それに伴い、被告古谷は原告白蓮院の主管・代表役員の地位を、また、その余の被告はその余の寺の住職・代表役員の地位を失うことにより、本件各建物の占有権原を喪失した。

1 日蓮正宗における擯斥処分に関する規定

(一) 日蓮正宗の宗規及び宗制は懲戒処分の一つとしての擯斥処分につき次のとおり定めている。

(1) 宗規二四四条 懲戒の種目を左の五種とする。

五 擯斥 僧籍を削除し、本宗より擯斥する。

(2) 同二四九条 左に掲げる各号の一に該当する者は擯斥する。

三 言論、文書、図画等をもって管長に対し、誹毀または讒謗をした者。

四 本宗の法規に違反し、異説を唱え、訓戒を受けても改めない者。

(3) 同一五条 管長は、この法人の責任役員会の議決に基づいて、左の宗務を行なう。但し、本宗の宗規に規定する事項に関してはその規定による手続きを経なければならない。

五 教義に関して正否を裁定する。

七 僧侶、檀徒、信徒に対する褒賞及び懲戒並びに懲戒の減免、復級、復権、または僧籍の復帰。

(4) 同二五一条 褒賞及び懲戒は、総監において事実の審査を遂げ、管長の裁可を得てこれを執行するものとする。

(5) 同二五三条 懲戒は、管長の名をもって宣告書を作り、懲戒の事由及び証憑を明示し、懲戒条規適用の理由を附する。

(6) 宗制三〇条 参議会は、代表役員より諮問された左に掲げる事項について審議し、答申する。

二 褒賞及び懲戒に関する事項

(二) 右宗規及び宗制によると、日蓮正宗における擯斥処分は、管長において該当者に宗規二四九条所定の処分理由があると認めるときに、総監に事実の審査を遂げさせ、代表役員の諮問により参議会の答申をえて、管長が、責任役員会の議決に基づき該当者を擯斥処分に付し、その執行のため裁可し管長名による宣告書が作成され該当者に交付されることにより該当者の僧籍を剥奪し、日蓮正宗より該当者が擯斥されるものである。

2 擯斥処分権者としての管長

(一) 日蓮正宗における擯斥処分権者である管長は宗規一三条2により法主の地位にある者が充てられる。

(二) 法主の地位は血脈相承によってのみ承継される。

(1) 血脈相承の意義

血脈相承とは、宗祖から第二祖日興上人はじめ歴代の法主を通して承継されてきた宗祖の血脈をただ一人体得している当代法主(場合によっては生前に退職した前法主)がこれを次期法主たるべき者に承継させる宗教的行為であり、宗祖の血脈は、代々の法主から法主へ、血脈相承により、一器の水を一器に移すようにして承継されてきた。

この血脈相承は、次のとおり宗祖の仏法の承継と、法主になるための資格の承継という点で、日蓮正宗の教義・信仰上重大な意義を有する。

① 宗祖の仏法の承継

宗祖の血脈は、血脈相承によってのみ、代々の法主に承継される。また、宗祖の仏法は、宗祖の滅不滅(生死)をこえて、末法時代の永遠の未来に至るまで断絶することなく流布すべきものとされており、宗祖の血脈の断絶はあり得ないこととされ、血脈相承によらなければ宗祖の血脈を承継することはできないとされていることから、血脈相承もまた断絶することはあり得ず、血脈相承の不断ということが、日蓮正宗における教義・信仰上の絶対的な要請である。

そして、血脈相承は宗祖の血脈を承継させる行為であるから、宗祖の血脈を体現している者によってのみ、これを次の後継者に承継させることができ、当代の法主が次期法主たるべき者に血脈相承することが原則とされているが、やむを得ない事由により当代法主が血脈相承できないという例外的な場合には、前法主が次期法主たるべき者に血脈相承することができるのである。

② 法主になるための資格の承継

血脈相承により宗祖の血脈を受けた者のみが法主になりうるのであり、その意味において血脈相承は、法主になるための資格を承継させる行為という意義を有している。

しかし、血脈相承によって次の法主が定まるからといって、これを法律行為における意思表示の如く理解するのは誤りであり、血脈相承の目的と意義は、あくまで宗祖の血脈を次代に伝えて断絶させないようにするという純粋に宗教的な領域に属するのである。

(2) 血脈相承の方法

① 唯授一人

血脈相承は唯授一人とされ、法主がその後継者に仏法を伝授するに当たり、授けるにふさわしい者ただ一人を選んで承継させるとされている。

② 口伝

宗祖からの血脈相承は、血脈相承を授ける者が、これを受ける者に相対し、一対一で口頭で伝える口伝相承によりなされてきた。

③ 秘伝

血脈相承は秘伝とされ、その具体的内容も具体的行為も秘密とされる。血脈相承には一定の方式ないし儀礼を伴うかもしれないが、それは法主以外の者には絶対に知り得ないことである。

(三) 日蓮正宗における法主の資格ないし地位の承継に関する準則

(1) 不文の準則の存在

日蓮正宗における法主の資格ないし地位の承継は、宗旨の根幹をなす教義・信仰上の問題であり、それに関する準則は、最も文章化することに親しまず、不文の準則として存在してきた。その内容たる法主の地位の取得要件は、当代法主(場合によっては前法主)から血脈相承により宗祖の血脈を承継することと、当代法主が退位又は遷化することである(ただし、当代法主が既に遷化していて前法主から血脈相承を受けた場合には法主としての資格と地位を同時に取得する。)。

(2) 現行の成文規定

宗規には次の規定があり、この成文規定についても、不文の準則と矛盾しないような解釈をすべきである。

① 宗規第二条 本宗の伝統は、外用は法華経予証の上行菩薩、内証は久遠元初自受用報身である日蓮大聖人が、建長五年に立宗を宣したのを起源とし、弘安二年本紋戒壇の本尊を建立して宗体を確立し、二祖日興上人が弘安五年九月及び十月に総別の付嘱状により宗祖の血脈を相承して三祖日目上人、日道上人、日行上人と順次に伝えて現法主に至る。

この条文は、宗祖の宗旨が、血脈相承によって、断絶することなく代々の法主に承継されているとの教義・信仰を表明したものである。

② 宗規第一四条 法主は、宗祖依頼の唯授一人の血脈を相承し、本尊を書写し、日号、上人号、院号、阿闍梨号を授与する。

2 法主は、必要を認めたときは、能化のうちから次期の法主を選定することができる。但し、緊急やむを得ない場合は、大僧都のうちから選定することもできる。

3 法主がやむを得ない事由により次期法主を選定することができないときは、総監、重役及び能化が協議して、第二項に準じて次期法主を選定する。

4 次期法主の候補者を学頭と称する。

5 退職した法主は、前法主と称し、血脈の不断に備える。

6 前法主は、法主の委嘱により、本尊を書写し、日号を授与する。

右条文の一項は、宗祖以来の唯授一人の血脈相承を受けた者のみが、法主の資格を有するとの意味である。

同二項は、次代の法主の決定が当代法主の専権であることを表明したものである。ここにいう「選定」とは、当代法主が次期法主たるべき者に血脈相承を授け、法主たりうる資格を付与することである。「必要を認めたとき」とは、血脈の不断に備えて、法主が適切と感じた時に、予め血脈相承して、次代の法主を選び定めておくべきことを前提としている。被選定者の僧階資格については能化を原則として大僧都以上ならばよいことを示し、「緊急やむを得ない場合」かどうかは法主の裁量による。ただし、僧階は一定の目安にすぎず、血脈相承を授けるに最もふさわしい者が誰かといった判断は、授ける法主の専権に委ねられているのであり、事柄の性質上僧階によって制限しうるものではない。血脈相承を受けた次期法主の法主就任時期については、当代法主の裁量によるものであり、任意の退位又は遷化のときである。

同三項は、当代法主がやむを得ない事由により後継者に血脈相承を授けることができなかった場合の規定である。この規定は血脈相承の不断に備えた前法主がいることを前提としており、前法主の存在しない場合に適用される余地はない。ここにいう「選定」の意味も二項と同様である。

同四項は、当代法主が次期法主の候補者を定めた場合の規定であり、学頭を設けるか否かは法主の裁量による。学頭の選任権者は当代法主である。学頭は、血脈相承を受ける候補者にすぎず、後に血脈相承を受けて次期法主となり、当代法主の退位又は遷化によって法主に就任する。

同五項は、三項の趣旨を前法主の側から規定したものである。

同六項は、法主は血脈相承を受けた者として、本尊書写、日号授与等の権能を有するが、退位して前法主となった後は、当代法主の委嘱がある場合に限り右権能を有するとの趣旨である。

(四) 阿部日顕(以下、「日顕」という。)の管長就任

(1) 日蓮正宗の第六六世法主細井日達(以下、「日達」という。)は、昭和五三年四月一五日、総本山において日顕に血脈相承を授け、次期法主に選定した。

(2) 日達は、昭和五四年七月二二日、遷化したので、これに伴い日顕は第六七世法主に就任し同時に管長に就任した。

(3) 日顕が日蓮正宗の正統な第六七世法主であることは、次のとおり、日蓮正宗内において確定している。

すなわち、日顕は、日達が遷化した昭和五四年七月二二日、緊急重役会議において日達から血脈相承を受けていた旨発言したのを始めとして、宗内への公表(前同日)、御座替式(同年八月六日)、管長訓諭(同年八月一一日)、御代替奉告法要(昭和五五年四月六日)などにおいて、法主・管長として行動していたのに対し、宗内の何人も異を唱えず、被告らも各種法要に出席し、信伏随従していた。

また、被告ら及びこれに同調する僧侶が異を唱え始めてからも、宗内においては、能化全員、宗会議員全員、被告らを除く僧侶全員による声明、決議により、日顕が正当な法主であることが確認されている。

3 被告らの懲戒処分事由

(一) 被告の所説が異説であること

(1)① 被告らは、昭和五六年一月一一日付通告文(以下、「通告文」という。)をもって、日蓮正宗の法主であり管長である日顕に対し、「貴殿には全く相承が無かったにもかかわらず、あったかの如く詐称して、法主ならびに管長に就任されたものであり、正当な法主ならびに管長と認められない」旨を通告し、その内容を機関誌「継命」(昭和五六年一月二二日号)にて公表し、また、被告古谷、同佐野、同近藤及び同原田は同月二一日、被告西本は翌五七年四月二二日、それぞれ静岡地方裁判所に日顕を被告とする訴訟を提起し(以下、「管長事件」という。)、「前法主細井日達上人の生前において相承がなされた事実は存しない」、「阿部日顕の『法主』の地位は、宗制宗規に基づかないいわば僣称に過ぎず、正当な根拠がなく『就任』したものであり、阿部日顕『法主』は、本来存在しない」等の主張をした。

② しかし、日蓮正宗の教義・信仰によれば、宗祖の血脈を承継するためには血脈相承という格別の宗教行為が不可欠であり、かつ、宗祖の血脈及び血脈相承の断絶はあり得ず、また、この血脈相承をなし得るのは血脈相承を受けて法主となった者、すなわち、当代法主又は前法主のみであるとされているのにかかわらず、被告らは、日顕の血脈を否定し、日達が生前において誰に対しても血脈相承をしなかったと主張しているのであるから、宗規二四九条三号及び四号に該当し、日蓮正宗の教義及び信仰の根幹をなす血脈相承を否定する異説を唱え、管長に対し誹毀・讒謗をしたことにあたる。

(2) 宗内における異説の確定

① 被告の所説が異説であることは、これを日蓮正宗における血脈相承に関する教義・信仰に照らしてみた場合、一見して明白であり、宗内僧俗がこぞってこれを確認し、能化による声明、宗会議員の決議、僧侶全員の決議等様々の機会をとおして被告らを糾弾している。

② 日蓮正宗において、教義の解釈・裁定権者は法主であるが、法主である日顕は、昭和五七年一月一六日、総監、重役の意見を徴しつつ、被告の所説が異説である旨確認的に裁定した。

(二)(1) 日蓮正宗は、被告古谷、同佐野、同近藤及び同原田に対し、院第三〇〇号(昭和五六年二月四日付)、院第四三八号(同年九月一五日付)、及び院第四九九号(昭和五七年一月一九日付)の各院達並びに昭和五七年一月二一日付「訓戒」をもって、その所説を改めるべく訓戒したが、右被告らはこれを改めなかった。

(2) また、日蓮正宗は、被告西本に対し、昭和五七年六月二一付「勧告文」及び同年八月五日付「訓戒」をもって、その所説を改めるよう訓戒したが、同被告もこれを改めなかった。

4 処分手続

日蓮正宗の管長日顕は、総監において事実の審査を遂げさせた上で(宗規二五一条)、被告古谷、同佐野については昭和五七年二月五日、被告近藤については同年四月五日、被告西本、同原田については同年八月二一日、参議会の答申を経て(宗制三〇条二号)責任役員会の議決により(宗規一五条七号)擯斥処分に付し(以下、「本件処分」という。)、それを裁可し(宗規二五一条)、管長の名をもって宣告書を作成し(宗規二五三条)、被告古谷、同佐野に対しては昭和五七年二月八日、被告近藤に対しては同年四月五日、被告西本、同原田に対しては同年八月二一日、それぞれ宣告書が届られた。

5 占有権原の喪失

被告らは、本件処分により、日蓮正宗の僧籍を喪失するに伴い、原告らの主管又は住職たる地位及び代表役員たる地位も喪失した。これにより、被告らは本件各建物を占有する権原を喪失した。

六 再抗弁に対する認否及び被告らの主張

1 再抗弁の頭書の事実は否認し主張は争う。

2 同1の事実(擯斥処分の規定)は認める。

3(一) 同2の事実(擯斥処分権者としての管長)のうち(一)の事実は認める。

同(二)の事実は否認する。

同(三)の(2)のうち原告ら主張どおりの宗規第二条、第一四条の規定が存することは認める。

同(四)の事実は否認する。

(二)(被告らの主張)

(1) 日顕は、次のとおり日蓮正宗の法主たる地位に就任したことはなく、したがって、管長の地位につくこともありえず、それを僣称しているにすぎない。

(2) 日蓮正宗における成文の法主選任準則

① 法主の就任は宗規により、左記のいずれかの場合に行われる。

(a) 法主による選任(宗規一四条二項)

(b) 法主による選任が不能の場合においては、総監、重役及び能化の協議による選任(宗規則一四条三項)

(c) なお被選任資格者は緊急やむを得ない場合のほか、能化の地位にある者に限られている(宗規一四条二項)。

② 法主による選任を定める宗規一四条二項は、元法主に次期法主選任権があること及び右選任は選定行為によって行われることを規定し、そこにいう選定行為は自然人としての法主による意思表示を中核とする法主の交代の客観的具体的事実行為を意味し、法主選定の血脈相承はこのように解すべきである。

これに反し、選定の意味を原告らの主張のように世俗人が判断できない宗教上の概念として血脈相承と解するとするならば、裁判所は法主及びその充て職である管長の地位の存否につき判断できないことになり、代表役員の任免準則を定めるべき旨を規定した宗教法人法一二条の趣旨は無意味となる。

(3) 日達は、昭和五四年七月二二日、次期法主を選任することなく現職のまま遷化したので、次期法主は宗規一四条三項による協議により選任されなければならないのに、かかる協議はおこなわれないまま、当時能化の地位になく、それより下位の大僧都の地位にあったにすぎない日顕が法主に就任したとされている。

(4) しかし、日顕には、宗規一四条二項の選定に該当し、これを表象する事実行為としての相承行為は存在しないし、また、緊急やむを得ない事由も存在しなかったから、宗規上能化でない日顕が法主に選任されることはありえない。

4 同3の(一)(2)の事実のうち①の事実は認めるが、②の事実を否認し、その主張を争う。

同(2)の事実は否認する。

同(二)の(1)及び(2)の事実は認める。

(被告らの主張)

被告らは、次のとおり日蓮正宗の教義、信仰の根幹をなす血脈相承を否定し異議を唱えたことはないし、また、管長を誹毀・讒謗したこともない。

(一) 異説性の欠如

(1) 異説の意義

宗規二四九条四号の異説とは、教義に関する主張で、宗規一五条五号に基づき管長が異説と裁定したものをいう。

(2) 教義に関する主張の不存在

被告らは、日顕が法主に選任された事実がないことの確認を得て、管長事件の提起に至ったものであり、右提起は団体の構成員としての権限、義務の行使であって、いかなる意味でも日蓮正宗の教義に関する主張には当たらない。

被告らの主張は、法主選任準則に基づく選定行為が存在しないという事実主張につきるものであり、信仰上の血脈相承の存否については主張しておらず、したがって、教義上の主張はしていない。すなわち、血脈相承には、信仰上存在する事実を意味するもの、宗教上の儀式を意味するもの、規範的選任準則たる宗規一四条二項以下の選定行為を意味するものがあるが、被告らは、後二者を意味するものとして「相承」という語を用いたのであり、信仰上の概念である血脈相承を否定したり、信仰上存在する事実としての血脈相承の存否について主張をしたことはない。

(3) 異説裁定の欠如

本件処分については、責任役員会の異説確認の議決はあるが、宗規一五条五号に定める管長の異説裁定は行われていない。

(4) したがって、処分対象とされた被告らの所説は異説性を欠いている。

(二) 誹毀・讒謗について

宗規所定の法主選任準則に則った選定行為が行われていないという主張は、管長に対する誹毀・讒謗に当たらないことは明らかである。

5 同4の事実のうち、宣告書が原告らの主張する日に被告らに届けられたことは認めるが、その余の事実は知らない。

七 再々抗弁

1 信義則違背

管長事件において、日蓮正宗側は、訴訟上陳述の適格がなく、裁判所の認定判断にも相手方の認否にも親しまない信仰上の事実を要件事実の名のもとに主張し、これに対応する被告の事実主張に対しては、教義上の異説を唱えたとして処分したものである。これは、訴訟当事者の訴訟活動を不当に制約し国民の裁判を受ける権利を侵害するものであり、信義則に違背し権利の濫用であって許されないというべきである。

2 代理人による陳述

被告らの準備書面は、すべて、その訴訟代理人である弁護士によって作成され、陳述されているものであり、かかる訴訟上の陳述について、訴訟上の効果の外いかなる意味でも被告ら本人の責任を問うことはできない。

3 訴訟圧殺目的

法主選任準則に基づく選任あるいは被選任資格がないなど、日顕による僣称を疑わせる十分な根拠があり、しかも、日顕が右の点について全く釈明すらしない態度から、被告らが適法な法主選定がないと判断し、管長・代表役員ではないことの確認を求める訴訟を提起することは、憲法によって保障された国民の当然の権利であり、法人構成員としての当然の責務でもある。かかる当然の権利行使に対して、教義にかこつけてなされた本件処分は、その時期からしても、右訴訟の圧殺を目的としたものであることは明らかであり、懲戒権の濫用である。

八 再々抗弁に対する認否

いずれも争う。

(第二、第四、第六、第八及び第一〇事件=地位確認請求事件)

一 請求原因

1 第一、第三、第五、第七及び第九事件の抗弁1ないし4の事実と同じである。

2 しかし、原告らは被告らが原告らの代表役員及び責任役員の地位にあることを争っている。

3 よって、被告らは原告らの代表役員及び責任役員の地位にあることの確認を求める。

二 請求原因に対する認否

請求原因1及び2の事実は認める。

三 抗弁

1 第一、第三、第五、第七及び第九事件の再抗弁1なし4の事実と同じである。

2 被告らは、本件処分により、日蓮正宗の僧籍を喪失し、よって原告らの主管又は住職の地位を喪失するとともに、原告らの代表役員たる地位及び責任役員たる地位を喪失した。

四 抗弁に対する認否及び主張

第一、第三、第五、第七及び第九事件の再抗弁に対する認否及び主張と同じである。

五 再抗弁

第一、第三、第五、第七及び第九事件の再々抗弁と同じである。

六 再抗弁に対する認否

いずれも争う。

第三 証拠〈省略〉

理由

第一(第一、第三、第五、第七及び第九事件=建物明渡請求事件に対する判断)

一請求原因及び抗弁事実はいずれも当事者間に争いがない。

二そこで、原告らの再抗弁(擯斥処分)について判断する。

1  再抗弁1の事実(日蓮正宗における擯斥処分の規定)は当事者間に争いがない。

2  同2の事実(擯斥処分権者としての管長)について

(一)  まず、日蓮正宗における懲戒処分権者が管長であり、管長は法主の地位にある者が充てられることは当事者間に争いがない。

(二)  次に、日顕が法主の地位に就任したか否かにつき検討する。

(1) 証人早瀬義寛の証言(以下、「早瀬証言」という。)、同秋山徳道の証言(以下、「秋山証言」という。)及び弁論の全趣旨によれば、日蓮正宗における法主は、宗派の最高権威者・統率者として、宗内の秩序維持を計る権限と責任を有するとともに、宗祖の仏法の極理をただ一人継承した者として、日蓮正宗における教義を解釈し、教義上の争いないし疑義が生じた場合にはその正否について最終的な裁定を下し、さらに本尊を書写し授与する権能を有する者として特別の尊崇を受けていることを認めることができ、右認定に反する証拠はない。右事実によると、法主の地位は宗教上の地位であるということができる。

(2) ところで、裁判所が、かかる宗教上の地位の存否についても判断することができるか否かについてであるが、それが具体的な権利又は法律関係を巡る紛争の当否を判断する前提問題としてであれば、その判断の内容が宗教上の教義の解釈にわたらない限り、裁判所は、審判権を有するものと解するのが相当である(最判昭和五五年一月一一日民集三四巻一号一頁、同昭和五五年四月一〇日判例時報九七三号八五頁参照)。

これを本件についてみると、本件は、被告らが日蓮正宗の管長である日顕によって擯斥処分を受けたことにより、本件各建物の占有権限を喪失したとして、原告らが被告らに対し所有権に基づき本件各建物の明渡しを求めるものであるところ、日蓮正宗においては、前記(一)のとおり法主の地位にある者が当然管長に充てられるのであるから、日顕が法主の地位に就任したか否かは擯斥処分の効力ひいては本訴請求の当否を判断する前提問題となり、したがって、裁判所は、日蓮正宗の教義の解釈にわたらない限り、日顕が日蓮正宗の法主の選任手続きに従って法主の地位に就任したか否かについて審理・判断することができるというべきである。

(3) まず、日蓮正宗における法主の選任手続についてであるが、宗規一四条二項が、「法主は、必要を認めたときは、能化のうちから次期の法主を選定することができる。但し、緊急やむを得ない場合は、大僧都のうちから選定することができる。」と規定していること、同三項が、「法主がやむを得ない事由により次期法主を選定することができないときは、総監、重役及び能化が協議して、第二項に準じて次期法主を選定する。」と規定していること、当事者間に争いがない。

しかし、原告らは、日蓮正宗は、法主の選任に関する不文の準則が存在しており、これによれば、法主の選任手続は当代法主(場合によっては前法主)が血脈相承なる宗教的行為により宗祖の血脈を次期法主に授けること、及び当代法主が退位または遷化することであり、宗規一四条もこれと矛盾しないような解釈をすべきで、すなわち、同条二項にいう「選定」とは、法主が次期法主に血脈相承を授けることを意味し、同条三項は法主がやむを得ない事由により血脈相承を授けることができない場合には、総監、重役及び能化が協議した上前法主が血脈相承を授けることを定めたものであると主張し、これに対し、被告らは、宗規一四条の規定する「選定」とは自然人としての前法主による意思表示を中核とする客観的具体的事実行為であって、信仰上の概念である血脈相承ではないと主張するので考えるに、〈証拠〉によれば、以下の事実を認めることができ、秋山証言中右認定に反する部分は前記証拠に照らしたやすく措信できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

① 宗規二条は「本宗の伝統は、外用は法華経予証の上行菩薩、内証は久遠元初自受用報身である日蓮大聖人が、建長五年に立宗を宣したのを起源とし、弘安二年本門戒壇の本尊を建立して宗体を確立し、二祖日興上人が弘安五年九月及び十月に総別の付嘱状により宗祖の血脈を相承して三祖日目上人、日道上人、日行上人と順次に伝えて現法主に至る。」と定め、同一四条一項は「法主は宗祖以来の唯授一人の血脈を相承し」と定めている。

② 宗規一四条一項と同旨の規定は、日蓮正宗が明治三三年九月本門宗から独立して日蓮宗富士派となって制定した宗制寺法以来おかれており、伝統的に、宗祖の仏法の一切を継承し、協議の解釈、裁定を行うなど宗派を統率する宗教上の最高権威者とされてきた。

③ 日蓮正宗の法主に就任するには、伝統的に、現法主から次期法主となるべき僧侶に対し「血脈相承」と称する行為がなされ、法主の退職または死亡により血脈相承を受けた僧侶が新たに法主に就任するものとされてきており、ここに血脈相承とは、宗祖から歴代の法主を通して継承されてきた宗祖の血脈をただ一人体得している当代の法主がこれを次期法主たるべき者に承継される宗教的行為であり、法主がただ一人の次期法主としてふさわしいと考える僧侶に対して口頭で行うものとされ、右両名以外の立会いは許されず、その内容及び方法は秘密とされており、また、血脈相承の断絶はあり得ず、この血脈相承の不断が日蓮正宗における協議・信仰上絶対的なものとされている。

④ 日蓮正宗は、明治以降、当時の政府が宗教政策の一環として、宗教団体に対し、宗教規則の制定及び管長を義務づけ、規則はもとより管長の就任についても認可制を採用したことに伴い、明治三三年九月宗制寺法を制定して管長を置き、「管長は宗祖己来の法系を伝承し法主と称す」(一四条)と定めて法主を管長の単なる呼称に過ぎないものとし、さらに、管長就任手続として、管長が次期管長候補者として大学頭を選任し、管長欠員の場合に大学頭が監督管庁の認可を得て管長の職につくものとし(九条、二五条)、管長の死亡等により大学頭が選任されていない場合には、管長候補者を選挙するものとし(二六条)、昭和一六年改正の宗制においても右と同旨の規定が置かれた。

⑤ しかし、これら管長職及びその候補者の選挙規定は、血脈相承を授けられた法主をもって宗内の最高権威者とする日蓮正宗の伝統とは相容れないものであった。そこで、日蓮正宗においては、当時も、管長の就任と法主の地位の承継とを画然と区別し、たとえ管長の就任につき主務官庁の認可がなされても、当然には法主の地位が承継されるものではなく、法主の地位は、血脈相承により継承されるものとされ、右認可の後、法主が管長に対し血脈相承を授けるという方法がとられていた。

⑥ 戦後、宗教関係法令の改廃、制定がなされ、前記管長制が廃止された後も、日蓮正宗においては宗規上管長職及びその候補者の選挙に関する規定が残されていたが、右選挙は実施されることはなく、血脈相承によりその地位を授けられたとされる法主が管長に就任してきた。

昭和四九年八月八日宗規が改正され、従前の管長候補者の選挙制度は廃止されたが、管長の職制はそのまま残り、宗規一三条に「本宗に管長一人を置き、本宗の宗規の定めるところによって、一宗を総理する。2 管長は、法主の職にあるものをもって充てる。」と定められるとともに、法主が次期法主を選定する旨の前記宗規一四条二項の規定が新たに設けられ、現在に至っている。

右事実によれば、日蓮正宗においては伝統的に血脈相承という宗教的行為が法主の選任手続とされ、血脈相承を授けられたとされる者が当代法主の遷化又は退職により次期法主に就任してきたこと、これは宗制寺法上法主を管長の呼称に過ぎないと定めた明治以降においても同様であったこと、宗祖の血脈が絶えることなく当代法主から次期法主へ受け継がれるということが教義・信仰上の絶対的な要請であることが明らかであり、これらに鑑みると、日蓮正宗における法主の選任手続きは宗教的行為である血脈相承によりなされるというべきである。してみると、法主の選任について定めた成文の規定である宗規一四条二、三項についても右血脈相承の意義を無視した解釈はできないものというべきであり、宗規一四条二項にいう「選定」は、原告主張のとおり、当代法主が次期法主に血脈相承を授けることを指すものと解すべきであり、血脈相承を授けられた者が当代法主の遷化又は退職により次期法主に就任するものと解するのが相当である。

これに対し、被告らは、管長(代表役員)という世俗の地位の前提たる法主の選任手続が信仰上の概念である血脈相承であるとしたならば、裁判所は法主及びその充て職である管長の地位の存否につき判断できないこととなり、代表役員の任免準則を定めるべきことを規定した宗教法人法一二条の趣旨が失われると主張するけれども、法主選任の手続は日蓮正宗が自由に定め得るものであり、右手続に宗教的要素を含むことが許されないとする理由はなく、むしろ、宗教的要素の排除を求めるのは、宗教団体の自治を侵害し、信教の自由を侵すおそれがあるというべきである。宗教法人法一二条も、代表役員を一義的に明確に定めるべきことを規定したにとどまり、それ以上に代表役員の地位の前提となる地位の選任手続が宗教的要素の含まれないものであることまで要求するものとは解されないから、被告らの主張は失当といわざるを得ない。

(4) 続いて、日顕が日達から血脈相承を授けられて法主に就任したか否かについて考える。

血脈相承は、前述のとおり宗祖から歴代の法主を通して承継されてきた宗祖の血脈を当代法主が次期法主たるべき者に承継させる宗教的行為であり、血脈相承の不断は日蓮正宗における信仰上の絶対的な要請で、その教義の根幹をなすものである。したがって、血脈相承が真実行われたか否かにつき裁判所が直接審理・判断するとすれば日蓮正宗の教義にかかわらざるを得ず、信教の自由を侵すおそれがあるといわざるを得ない。

かかる場合においては、裁判所としては日蓮正宗の教義の解釈に立ち入り審理・判断することを避けるべきであることは勿論のことではあるが、宗教団体における自治と信教の自由を尊重するため、日蓮正宗自身が、日顕が血脈相承を授けられ法主に就任したことを肯認しているか否かを審理することによって、日蓮正宗においてこれが肯認されているとすれば、この宗教的判断を尊重し血脈相承が存在したとされていることを前提として裁判するのが相当である。

そこで、日蓮正宗において日顕が日達から血脈相承を授けられて法主に就任したことが肯認されているか否かにつき考えるに、〈証拠〉によれば次の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

① 日達は昭和五四年七月二二日遷化し、同日午前一一時一〇分より、日蓮正宗総本山大石寺において、日顕(当時大僧都、総監)、椎名日澄(当時重役)、早瀬日慈(能化)及び藤本栄道(当時庶務部長)が出席して緊急重役会議が開催され、その席上、日顕は日達から昭和五三年四月一五日、血脈相承を授けられた旨発表し、他の三名は、異議を唱えなかった。

続いて、同日午後七時より日蓮正宗のほとんどの僧侶が参加して行われた日達の通夜の席上、椎名日澄は、日顕が日達から血脈相承を受けていたこと及び日顕が法主に就任したことを発表したが、出席者は誰も異議を唱えなかった。また、同日付の院達によって、日達が生存中に日顕に血脈相承を授けた旨の発表がされ、さらに、同月二三日付院達によって、日顕が法主及び管長に就任した旨発表された。

同年八月六日、大石寺において、宗内の僧侶の代表が参加して日顕の御座替式(法主就任儀式)が行われ、引き続いて、宗務機関たる責任役員会(管長の外、総監、重役で構成する。)の構成員である総監、重役をはじめとし、能化全員及び宗会議長等の宗内の主だった僧侶と、信者の代表が参加してお盃の儀(新法主の登座を祝い、新法主との師弟の契りを固める儀式)が行われた。

日顕は、同年八月二一日、法主・管長の就任にあたり、宗内全僧侶及び信者に対し、日顕が日達から血脈相承を受け同年七月二二日管長の職についた旨の訓諭を発した。

さらに、昭和五五年四月六日、大石寺において、全僧侶及び多数の信者の参加のもとに、日顕の法主就任を宗祖日蓮に奉告する儀式である御代替奉告法要が行われた。

② 日顕は、昭和五四年七月二二日以来、本尊の書写をはじめとする法主の職務を行ってきたが、一年以上の間、被告らを含む何人からも異議を唱えられたことはなかった。

③ しかるに、被告ら及びこれに同調する僧侶らが日顕の法主就任に異議を唱えるようになった経緯は次のとおりである。

宗教法人創価学会は、日蓮正宗の教義を信仰する宗教法人であって、その会則上、日蓮正宗を外護するものとされているが、創価学会が急成長を遂げる中で、日蓮正宗との間に対立が生ずるようになった。

そして、創価学会の現状に批判的な僧侶は、昭和五二年ころから、創価学会を批判し、日蓮正宗の教義に従った正しい信仰を確立することを標榜するいわゆる正信覚醒運動を行うようになり、被告らも右運動に加わった。

右僧侶らは、正信覚醒運動の一環として、創価学会を退会した日蓮正宗の信者を集め、昭和五三年八月、昭和五四年一月、同年八月、昭和五五年一月の四回にわたり全国檀徒大会と称する会を開催した。

日達は、昭和五四年五月三日、創価学会第四〇回本部総会において、創価学会と日蓮正宗の対立は一応収束し、今後僧俗和合して広宣流布に進むべき旨指南したが、日顕も、昭和五五年一月開催の第四回全国檀徒大会において、日達の僧俗和合協調路線を強調してこれに従わない者は日蓮正宗の信心のあり方から完全に逸脱する旨指南し、同年七月に開催された全国教師指導会においても右路線を進めるべきことを強調した。

これに対し、正信覚醒運動の活動家である僧侶らは、同年七月四日、「正信会」という同宗の非公認組織を結成し、同年八月二四日、数度にわたる宗務院の中止命令に違反して、日本武道館において第五回全国檀徒大会を開催した。このため、日顕は、日蓮正宗の管長として、同年九月二四日、被告らを含め右大会に関与した者二〇一名を懲戒処分に付した。右懲戒処分がなされるや、被処分者らは、同宗の責任役員会や日顕に対し処分の撤回を要求するほか、処分無効を理由として裁判所に地位保全の仮処分を申請するなどして争った。

一方、創価学会の顧問弁護士であった山崎正友は、雑誌「週間文春」昭和五五年一一月二〇日号に、日達から日顕への血脈相承には疑問がある旨の手記を発表し、被告らの代表は、同年一二月一三日、日顕に対し、同人の血脈相承は山崎の右手記によれば疑義があるとして、血脈相承の有無を質す旨の質問状を送付した。

被告らは、さらに、昭和五六年一月一一日、僧侶一四一名の連署で、日顕に対し、「貴殿には全く相承がなかったにもかかわらず、あったかの如く詐称して法主並びに管長に就任されたものであり、正当な法主並びに管長と認められない。昭和五五年九月二四日付懲戒処分はいずれも無効である。」旨の通告文を送付し、ここに至り初めて、日顕が血脈相承を受けていないと主張するに至った。

その後、住職罷免の処分を受けた者らは、前記仮処分申請事件において、懲戒処分の無効事由として、日顕は法主・管長でないが故に処分権者でない旨を主張し、さらに、被告らは、静岡地方裁判所に対し、日顕の血脈相承の不存在を理由として代表役員・管長の地位不存在確認請求の訴え(管長事件)を提起するに至った。

④ 日蓮正宗の能化全員は、昭和五七年一月一九日、日顕が日達から血脈相承を受けた、ただ一人の正統な日蓮正宗第六七世法主であることを確認し、これに異を唱える者を異義・異端の大僻見、大謗法の徒であるとの声明を出した。

日蓮正宗の宗会議員全員もまた、同月二二日、右能化の声明と同趣旨の決議をなし、日顕を法主であると拝し、同人に対する血脈相承に異を唱える者を師敵対の邪義・異説を唱える者であるとの声明を出した。

被告ら一部の者を除く全教師僧侶は、同年四月下旬、各布教区ごとに右と同旨の決議をした。

右事実によれば、日顕は、日達が遷化した直後前法主日達から血脈相承を受けたことを明言し、日蓮正宗も日顕を法主として肯認し、宗務機関、僧侶、信者も関与し、日顕の法主就任に必要な宗教上の儀式を行い、日顕も法主としての職務を執行し現在に至っており、ただ、被告らの一派が就任約一年半後に日顕の法主としての地位を否定する挙に出たが、その動機も、宗務院から正信覚醒運動の一環である第五回全国檀徒大会の中止を命ぜられ、これに違反して日顕から懲戒処分を受けたことに対抗するためのものであるに過ぎないことが認められる。

してみると、日顕は、昭和五四年七月二二日、日蓮正宗の法主に就任するとともに、管長に就任したと認められるから、日顕は擯斥処分権者であるというべきである。

3  同3(懲戒処分事由の存在)について

(一)  再抗弁3(一)(1)①(被告らが通告文、機関誌及び管長事件において、日顕が正当な法主、管長ではない旨主張したこと)の事実は当事者間に争いがない。

(二)  ところで、原告らは、被告らの右主張は日顕の血脈を否定し、日達が生前誰に対しても血脈相承を授けなかったことを内容とするものであり、これは日蓮正宗の教義及び信仰の根幹をなす血脈相承を否定する異説を唱え、管長日顕に対し誹毀・讒謗をしたものに当たるとして、宗規二四九条三号(言論、文書、図画などをもって管長に対し、誹毀または讒謗をした)及び四号(異説を唱え、訓戒を受けても改めない)に定める擯斥処分事由に該当すると主張する。これに対し、被告らは、日顕につき法主選任準則に基づく選定行為が存在しないという事実主張をしただけであり、信仰上の血脈相承の存否については主張していないから、異説性を欠き、また、このような事実主張は管長を誹毀・讒謗したことには当たらないと争っているので考える。

(1)  そもそも宗教団体においてある主張が異説に当たるか否かは、当該宗教団体が有する教義の内容と密接にかかわり合う問題であるから、本件のように、異説性の存否が懲戒処分の前提問題となっている場合には、裁判所は、法主の地位の存否の場合と同様に、宗教上の教義の解釈にわたらない限りにおいて、異説性の存否を審理・判断することができると解するのが相当である。したがって、裁判所としては、当該宗教団体における自治と信教の自由を尊重するため、異説性の有無が宗教上の教義の解釈にわたるときはその審理を避け、当該宗教団体における解釈を尊重し、当該宗教団体が自治的になした解釈を肯認して、これを基礎として判断すべきである。

かかる観点からみると、日蓮正宗においては、その宗規一五条五号が管長の権限として「教義に関して正否を裁定する」と規定していること(この点は当事者間に争いがない。)、また、前顕甲第一四号証及び弁論の全趣旨によれば、日蓮正宗の法主・管長である日顕は、昭和五七年一月一六日ころ、宗規一五条所定の責任役員会の議決を経て、被告らの所説が同宗における血脈相承を否定する異説である旨の裁定をしたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。さすれば、被告ら主張は、日蓮正宗の教義に反する異説を唱えたものといわざるを得ない。

(2) また、再抗弁3(二)(日蓮正宗が、被告古谷、同佐野、同近藤、同原田に対し、院達又は訓戒をもって、被告西本に対し勧告文及び訓戒をもってその所説を改めるべく訓戒したが、被告らはこれを改めなかったこと)の事実は当事者間に争いがない。

してみると、被告らの右行為は、管長を誹毀・讒謗したか否かにつき判断するまでもなく宗規二四九条四号の擯斥処分事由に当たるといわざるを得ない。

4  再抗弁4(本件処分手続)の事実について

〈証拠〉によれば、日蓮正宗は、総監において事実の審査を遂げた上で(宗規二五一条)、被告古谷、同佐野については昭和五七年二月五日、被告近藤については同年四月五日、被告西本、同原田については同年八月二一日、参議会の答申を経て(宗制三〇条二号)管長である日顕が責任役員会の議決により(宗規一五条七号)、被告らを本件処分に付し、管長の裁可を得(宗規二五一条)、管長の名をもって宣告書を作成し(宗規二五三条)、これを被告らに送付したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

また、右宣告書が、被告古谷、同佐野に対しては、昭和五七年二月八日、被告近藤に対しては、同年四月五日、被告西本、同原田に対しては同年八月二一日、それぞれ届られたことは当事者間に争いがない。

5  以上によれば、被告らは、日蓮正宗の教義に反する異説を唱え、訓戒を受けても改めず、そのため、法主・管長である日顕から宗規所定の手続に従って、本件処分に付せられたことが認められるから、原告らの右再抗弁(擯斥処分)は理由がある。

三被告らの再々抗弁(懲戒権の濫用)について判断する。

1  被告らは、被告らが、日蓮正宗の管長事件における主張に対応してなした訴訟上の事実主張が異説に当たるとして、日蓮正宗が被告らを処分したのは、被告らの裁判を受ける権利を侵害し、信義則に反し権利の濫用に当たると主張するが、しかし、訴訟上の主張であっても、その内容が当該宗教団体の教義に照らせば許すべからざる異説と評価される場合もあり得るのであって、訴訟上なされたからといって、その主張の異説性が否定されるいわれはなく、処分されることを否定することはできない。したがって、かかる場合に右主張をした者を処分することが信義則に反し権利の濫用に当たるということはできないから、被告らの右主張は理由がない。

2  また、被告らは、管長事件において日顕の法主就任を否定した被告らの準備書面は訴訟代理人によって作成され、陳述されているものであり、かかる陳述について、被告ら本人の責任を問うことはできない旨主張するけれども、準備書面の記載内容は特段の事情がない限り当事者本人の意思に基づくものと推認すべきところ、右特段の事情があるとは証拠上認められないから、被告らの右主張は失当である。

3 被告らは、本件処分は管長事件訴訟の圧殺を目的としてなされたものであり、懲戒権の濫用に当たると主張するので考えるに、宗教団体は、教義の同一性を基礎として存立する団体であるから、教義に反する異説を唱えることは宗教団体内部における規律違反の中でも最も重大な無視できない違反行為であるということができる(日蓮正宗が、異説を唱え訓戒を受けても改めない者に対し、懲戒処分の中でも最も重い擯斥処分に付する旨宗規二四九条四号で定めているのも右の点を考慮したものであると解される。)が、被告らの主張は、前記二で認定したとおり、日蓮正宗からみれば、同宗の信仰、存立の根幹にかかわる不断の血脈相承を否定するものであり、同宗の教義に反する異説の中でも最も重大な異説と評価できることに加え、被告らは訓戒を受けてもこれを改めなかったのであるから、本件処分が訴訟圧殺目的に出た懲戒権の濫用であるとは到底考えることはできないし、また、その他本件処分が右目的に出たことを認めるに足りる証拠はない。

4  してみると、本件処分が懲戒権の濫用であるとする被告らの再々抗弁は理由がないといわざるを得ない。

したがって、結局再々抗弁は理由がないものというべきである。

四結論

叙上の事実によれば、被告らは、本件処分により、日蓮正宗の僧侶の地位を喪失したものと認められ、当事者間に争いがない抗弁3の各事実(原告らの代表役員の任期は主管又は住職在職中とされ、主管又は住職には日蓮正宗の僧侶が就任するとされていること)によれば、被告らは日蓮正宗の僧侶の地位を喪失したことにより、原告らの主管又は住職の地位を喪失し、それに伴い、原告らの代表役員の地位も喪失し、その結果、被告らは本件各建物の占有権原を喪失し、したがって、被告らは各原告らに対し原告ら主張のとおり本件各建物を明け渡す義務があるというべきである。

第二(第二、第四、第六、第八及び第一〇事件=地位確認請求事件に対する判断)

一被告らの請求原因1ないし4の事実はいずれも当事者間に争いがない。

二そこで、原告らの抗弁事実につき判断するに、被告らが本件処分により日蓮正宗の僧侶の地位を失い、これにより原告らの主管又は住職の地位を喪失するとともに、代表役員の地位をも喪失したことは前記第一の二で説示したとおりであり、また、〈証拠〉によれば、原告らの責任役員の任期はいずれもその代表役員の任期と同じであることが認められるから、被告らは、原告らの代表役員の地位を喪失したことにより、責任役員たる地位をも喪失したものというべきである。したがって、原告らの抗弁は理由がある。

三被告らの再抗弁(懲戒権の濫用)が理由のないことは、第一の四で説示したとおりである。

四してみると、被告らの原告らに対する被告ら主張どおりの代表役員及び責任役員の地位の確認を求める請求はいずれも理由がない。

第三結び

以上の次第で、原告らの本件各建物の明渡しを求める各本訴請求はいずれも理由があるから認容し、被告らの代表役員等の地位の確認を求める各本訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を適用し、仮執行宣言の申立てについては、相当でないと認められるからこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官山口和男 裁判官坂倉充信 裁判官古部山龍弥)

別紙目録

一 所在  東京都江戸川区北小岩五丁目二七一番地一

家屋番号  二七一番一の一

種類  寺院

構造  鉄筋コンクリート木造陸屋根瓦葺二階建

床面積

一階 271.43平方メートル

二階 271.43平方メートル

二 所在  東京都葛飾区東金町一丁目二一三六番地四〇五

家屋番号  二一三六番四〇五

種類  本堂居宅

構造  木造瓦葺二階建

床面積

一階 332.78平方メートル

二階 138.29平方メートル

三 所在  東京都調布市深大寺町二五九一番地三

家屋番号  二五九一番三

種類  寺院

構造  木造スレート葺二階建

床面積

一階 290.04平方メートル

二階  54.65平方メートル

四 所在  東京都八王子市長房町一〇八八番地一二

家屋番号  一〇八八番一二

種類  寺院

構造  鉄骨造陸屋根平屋建

床面積 72.37平方メートル(付属建物)

種類  庫裡

構造  鉄骨造陸屋根二階建

床面積

一階 233.37平方メートル

二階  53.49平方メートル

五 所在  東京都世田谷区成城二丁目一一〇番地二

家屋番号  一一〇番二の一

種類  寺院

構造  木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建

床面積

一階 235.66平方メートル

二階  20.70平方メートル

六 所在  東京都世田谷区成城二丁目一一〇番地五

家屋番号  一一〇番五

種類  居宅

構造  木造スレート瓦葺二階建

床面積

一階 88.36平方メートル

二階 32.29平方メートル

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